1.要約

弊社「低コスト繊維強化セラミック材」は2021 年11 月にJAXA「革新的将来宇宙輸送プログラム」に選定され、宇宙往還機(日本版スペースシャトル)用耐熱・断熱外壁(熱防護システム)への適用に向けて現在、JAXA(第四研究ユニット 紙田 徹研究領域リーダー他)と共同研究を実施中です。昨年度の共同研究の高温曲げ試験で、800℃と850℃で曲げ強度が十分に高いことを確認しました。

この度(8月2-3 日)、JAXA 調布航空宇宙センター750kW アーク加熱風洞を用い、試作CMC 材を高温気流で加熱することで、以下の2点の確認を本試験の目的としました。

① 高温環境でも、気流からの動圧荷重に耐荷し、変形/破損しないこと。
② 温度が想定以上に上昇しないこと、すなわち表面触媒(アルミナ)等の影響で発熱しない。また、表面状態(平滑さ)の影響で加熱率が厳しくならないこと。

試験の結果、低コストかつ大型部材に適用可能な強度を有する耐熱材として弊社「繊維強化セラミックス (低コストCMC)」の 耐熱性を実証することができました。

2.試験装置概要

3.試験結果

(1)予定した通風・加熱を完了し、想定通り供試体温度は設計温度800℃に達しました。 また、供試体中の加熱が厳しい部分(風洞上流側など)は1,000℃以上になりました。 試験前後および加熱中に供試体の外観に有意な変化は観察されませんでした。

(2)温度が異常に高温になっている部分はなかったことから、表面触媒の反応はなかったものと判断いたします。

中温域への適用を想定した場合、弊社の「低コストCMC」材は軽量耐熱材料として下記の点で、Ni 系耐熱超合金ほか他材を凌駕し、宇宙輸送または地上の設計・製造・運用等を抜本的に変える可能性があります。
① 適用可能な最大製品サイズは1m 級である。
② CFRP のオートクレーブ成形で可能な形状は、基本的に同様に成形が可能である。
③ 量産時の目標コスト(板厚2㎜のCMC を作成したときの1m2あたりのコスト等)は100 万円程度で製造することが十分に達成可能である。

これら条件が実現できれば、自動車等の他分野で求められる低価格化要求に十分に対応可能で、燃料電池におけるケーシング、サーマルインシュレーション等用途にはきわめて有望であると考えられ、地上での課題解決につながる点においてDual Utilization(宇宙輸送と地上への波及効果)の創出に相応しいものと期待できます。

今回のアーク風洞試験の結果から、「低コスト繊維強化セラミック材」の宇宙往還機用耐熱・断熱外壁(熱防護システム)への適用がいよいよ現実味を帯びてきたものと考えています。